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2022.05.30 業界情報

一般廃棄物(不燃ごみ)弁当ガラ等の知られざる噂とは?

一般廃棄物弁当ガラ等の知られざる秘密とは?
 この記事はこんな方におすすめです●廃棄物関連の部署にいて、廃棄物について学びたい

東京23区の事業系廃棄物の分別基準にて一般廃棄物の不燃ごみが存在する。廃棄物の種類はまったく一緒だが、家庭系廃棄物では可燃ゴミ、事業系廃棄物では不燃ゴミとなる。なぜこのような分類となるのか?

弊社は東京23区を中心とした廃棄物収集運搬及び処分リサイクル会社であり、年間数千トンもの廃棄物を適正に運搬・処分している会社です。

今回は分別基準においてややこしい「弁当ガラ等」について取り上げてみたいと思います。

「弁当ガラ等」とは?

東京都23特別区で規定されている「弁当ガラ等」とは、一体どんな物なのでしょうか。東京二十三区清掃協議会が発行している「一般廃棄物処理業の手引」によりますと下記の様に記載されています。

【搬入可】

搬入可能な容器

1 プラスチック製容器(飲食物用)

(例)コンビニ弁当容器、弁当屋弁当容器、プリン・ゼリー容器、インスタント食品・カップ麵容器等

2 発泡スチロール製容器(飲食物用)

(例)惣菜トレイ等(付属したラップフィルムを含む)

3 ビニール製容器(飲食物用)

(例)菓子袋等

4 食品付属物

(例)容器の栓・ふた・キャップ、ストロー、寿司中仕切り等

5 食品保護用緩衝材

(例)発泡スチロール製クッション材

【搬入不可】

搬入不可の容器

※上記に記載したもの以外

1 清掃工場に搬入すべき可燃ごみ

(例)厨芥、紙くず、木くず、繊維くず等

2 産業廃棄物

(例)・文房具、針金、電化製品、コンピュータ用品、蛍光灯、ガラス、一斗缶、金属製品等
・建設工事現場から排出される針金、鉄線、ビニールパイプ等
・倉庫、運送会社、出版会社等から排出されるビニール袋、PPバンド、ワイヤー等
・食材以外のものを包装していたビニール袋、トレイ、クッション材、PPバンド等

3 容易にリサイクルルートにまわせる物

(例)飲食に伴って発生するびん、缶、ペットボトル、特定家庭用機器再商品化法対象物。

4 施設の安全操業に支障が生じる廃棄物

(例)長さ1.8m又は直径30cmを超える物、医療廃棄物等

5 特別区の区域外から発生した廃棄物

この様に「食品」関係のビニール・プラスチック類に厳しく限定されています。

問題

事業系の食品を扱う部門から発生する「ビニール製の手袋」には食品残渣物が付着していますが、このビニール製手袋は「弁当ガラ等」でしょうか? 「産業廃棄物」でしょうか?

ビニール製手袋

答えは産業廃棄物です。
(一般家庭・有料シールを貼って出す小規模事業者は「可燃ごみ」。)

東京二十三区清掃協議会の見解では、ビニール製手袋は食品を梱包していた物ではなく、事業活動の作業の一環として排出された物であり、(後述の)合成高分子化合物であるから食品残渣物が付着していても産業廃棄物ということでした。

皆様、お間違えの無いようお願い致します。

「弁当ガラ等」の処理

皆様ご存知の通り、弁当ガラ等は一般廃棄物の範疇ですが処分先は可燃ごみ用の清掃工場ではなく「中防不燃ごみ処理センター」に搬入し、埋め立て処分します。

地図

回収車両は一般廃棄物の許可車両ですが、持込み先(処分場)が異なるので可燃ごみ(清掃工場行き)とは別の一般廃棄物許可車両で回収することになります。

この「中防不燃ごみ処理センター」は文字通り不燃ごみ処理センターなので、区民の家庭から出された不燃ごみを処理する場所でもあるのです。

不思議(?)なことに、家庭からのビニール・プラスチック類と弁当ガラ系は可燃ごみとして清掃工場で焼却処分されますが、事業系である弁当ガラは埋め立て処分。しかも、家庭からの不燃ごみと一緒に処分されていまいます。

東京23特別区の担当者は盛んに「埋立処分場の延命」を強調し、ごみの削減を呼び掛けていますが、食品の付着したビニール・プラスチック類である弁当ガラは燃やさずに埋め立て処分をしているとは本末転倒の様な気がします。

では、事業系の食品の付着したビニール・プラスチック類はなぜ清掃工場で焼却処分されないのか?憶測の域を出ないのですが、我々の業界では下記の噂がささやかれています。

「弁当ガラ等」にまつわる噂

はてな

1「振り上げた拳を降ろせない説」

昔、まだ今の様にビニール・プラスチック類が食品関係には使用されておらず耐久消費財にしか使用されていなかった時代、事業系のビニール・プラスチック類は「廃プラスチック類=産業廃棄物」として定義されました。その廃プラスチック類の定義として「合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む。)など、固形状・液状の全ての合成高分子化合物」・・・、しかも条件として「あらゆる事業活動に伴うもの」というオマケまで付けてしまいました。

お豆腐や納豆、その他の食品残渣物をそのまま捨てれば「可燃ごみ」として認めることもできますが、別けられてしまった弁当ガラは業種に関わらず「全ての合成高分子化合物」なので「産業廃棄物」として処理せざるを得ない時代が続きました。

廃プラスチック類とは言うものの、食品残渣物の付着した廃プラスチック類を受入れてくれる処分業者は少なく、その数少ない処分場には毎日パッカー車の長蛇の列ができ、交通渋滞、汚水漏れによる悪臭や汚れが処分場の周辺で多発していました。

さすがのお役所(東京都環境局)もこれには打開策を講じることとなったのですが、何せ一度「産業廃棄物」と言ってしまったからには今更180°変更して「可燃ごみ」とは言えないのがお役所の常。仕方なく「一般廃棄物の不燃ごみ」=「弁当ガラ等」となり、清掃工場には搬入させず中防不燃ごみ処理センター行きとなりました。

2「清掃工場周辺住民への気遣い説」

廃プラスチック類を800℃以下で燃やすとダイオキシンが発生することが社会問題になっていた当時、清掃工場の焼却炉は800℃以上では焼却できないタイプが多かったと言う噂があり、清掃工場の近隣住民は神経質になっていました。(現在は全ての清掃工場で対策済み。)

弁当ガラが産業廃棄物から一般廃棄物に変更になった際、これを機に清掃工場で焼却しようと目論んでいたものの、「プラスチック類を燃やしたらダイオキシンが発生する!」と騒がれてしまうのではないか・・・。と言う説。

自分達の家庭ごみは良いが事業系はダメというのもおかしな話しですが「火葬場問題」と同じで、必要だと分かっていても近所にできるのは反対なのですね。

3「廃棄物業者を信頼していない説」

どの世界にもルールを無視する人がいる様に、残念ながら我々廃棄物業者にも心無い方がいます。今でも時折、清掃工場に搬入してはいけない産業廃棄物が見つかって騒ぎになっています。

元々「産業廃棄物」としていた弁当ガラを清掃工場に搬入しても良いとなったら、産業廃棄物の処分代よりはるかに安価な清掃工場に産業廃棄物を捨ててしまおうと、良からぬことを企てる輩がいてもおかしくありません。

それを防止するために清掃工場への搬入を認めていないという説。

4「清掃工場のキャパシティ限界説」

23区内には21箇所の清掃工場があります。(うち2箇所は現在建て替え中)とは言え、全ての清掃工場が稼働している訳ではなく、定期的な点検或いは故障等で複数箇所は必ず閉鎖されています。

また、稼働していても元々小さい規模で区収集の車両しか受け入れられない清掃工場もあります。基本的にギリギリの状態で稼働しているのに、そこに弁当ガラが加わったらパンクするから搬入できない説。

私が思うに、全ての要素が絡み合って現状となっている気がします。

「弁当ガラ等」から考える社会問題

数式が黒板に書いてあります以前のブログ記事にも書かせて頂きましたが、廃棄物を取り巻く問題は環境問題だけではなく社会問題でもあるのです。

例えば、車の免許制度。現在「普通車免許」で乗れるトラックは、車両総重量3.5t未満、最大積載量2t未満とされています。この普通車免許で乗れるのは区収集の小さなトラックだけで、我々の様な廃棄物業者では効率が悪く(大きなスーパーマーケットだと56店舗で満載)採算が取れません。

ただでさえ不人気な業種に加え、少子高齢化、慢性的・構造的な赤字業界にあって、やっと入社した社員に仕事をさせるには約20万円の中型免許を取得させる必要があり、免許を取らせてすぐに「辞めます。」ではどうしようもありません。

また、燃料費の高騰、働き方改革等もあり、負担は増加する一方です。第一、SDGsが声高に叫ばれている中、1店舗(スーパーマーケットの場合)に

①可燃ごみ②弁当ガラ③不燃ごみ(産業廃棄物)④段ボール⑤食品リサイクル

5台の車が行かなくてはならないのが現状なのです。

燃料の無駄、Co2の発生、危険度・人件費の増加等々、良いことは一つもありません。せめて、①可燃ごみと②弁当ガラとを同じ車両で積み、清掃工場に搬入できれば20%の様々な削減が可能なのです。

まとめ

今日より新型コロナウィルスが社会の脅威として騒がれていた頃、我々の業界は「エッセンシャルワーカー」と言われ「なくてはならない」と認識されました。

しかし、実際には様々な制約、実態があって「なくてはならない」が「なくならざるをえない」状況に陥っているのです。

「弁当ガラ等」という存在は、そんな我々の業界を映している様な気がしているのは気のせいなのでしょうか?

利根川 靖

監修

利根川 靖

株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。

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