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2021.02.11 業界情報

リサイクル優等生、基礎から学べる古紙(こし)とは?

リサイクル優等生、基礎から学べる古紙とは?

 

・うちの段ボールどこか回収してくれないかな?
・段ボールをリサイクルすると何になるのかな?
・段ボールのガムテープってリサイクルするのに剥がした方がいいの?

インターネット通販が当たり前になった今、段ボールは非常に身近なものとなりました。
日々何かしらの配送があるのではないでしょうか?

弊社は東京23区を中心とした廃棄物収集運搬及び処分リサイクル会社であり、年間数千トンもの廃棄物を適正に運搬・処分している会社です。

この記事には以下のようなことが記載してあります。

この記事を読むことにより、身近な段ボール古紙がどのようにリサイクルされているのか?生産量、需要などの数値、分別方法などを知ることができます。

私たちは日々生活する中で、様々なものを生産し、消費し、廃棄しています。限りある資源が永遠と続くものではありません。
環境問題を他人事ととらえるのではなく、日々のみなさんの一つ一つの行動が地球環境に影響を与えていることを自覚し、エコロジーな行動を心掛けていただきたいと思います。

古紙とは?

古紙とは、一度使用された紙類のうち「再生(リサイクル)できる紙」の総称のことで、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、ペーパーナプキン等の衛生用品に使用された紙類や禁忌品の付いたものはリサイクルできないので古紙とは言いません

法令では「資源の有効な利用の促進に関する法律」の通達「紙製造業に属する事業を行う者の古紙の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令等の運用について」で、次のように定義されています。

「紙、紙製品、書籍等その全部又は一部が紙である物品であって、一度使用され、又は使用されずに収集されたもの又は廃棄されたもののうち、有用なものであって、紙の原料として利用することができるもの(収集された後に輸入されたものも含む。)又はその可能性があるもの。(以下省略)」

私達の身近にある主な古紙は、段ボール、新聞、雑誌、チラシ、コピー用紙、牛乳パック等です。

古紙の説明の前に、「紙」の説明を致しましょう。

紙の歴史

地球儀

そもそも、紙とは「植物等の繊維を水の中に入れ、薄く平らに延ばして乾かしたもの。」とされています。

紙状のものは、文字(記録)を残す、或いは伝達する道具として古くから使われ、木の葉、樹皮等から始まり、様々なものが使用されて、現在の紙になったのです。
有名なものとしては、以下のようなものがあります。

パピルス

(古代エジプトで使われた、パピルスという草の茎を薄く裂き、縦横に並べたもの。繊維を水に溶かした製法ではないため、紙には分類されません。)

羊皮紙

(パーチメント。主にヨーロッパで使われていた、羊の皮等の毛を除去し、表面を磨いたもの。)

粘土板

(主にメソポタミアで使われ、柔らかい粘土に葦等の茎で「楔形文字」を記し、乾燥や焼き固めたもの。)

木簡・竹簡

(古代中国で使用された、木や竹を薄く削った細長い「札状」のもの。)

紙と呼ばれる最初のものは、紀元前2世紀頃の中国だと言われていますが、この頃は様々な方法でできた紙で、実用的な使いやすい紙が大量に作られるのは西暦105年頃までかかったようです。
当時の紙の材料は、服等に使われていた麻のボロ切れや樹皮だったと言われています。

日本へは、西暦610年(推古18年)に高句麗の僧侶:曇徴(どんちょう)によって墨とともに伝えられたと言われ(諸説あり。)、当時は麻が原料でしたが、その後は楮(こうぞ)や雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)が使われて日本独自の「和紙」に発展しました。

ちなみに、本格的に日本で現在の「洋紙」が作られたのは、1874年(明治7年)「有恒社」(現東京都中央区日本橋蛎殻町)、翌年に王子製紙となる「抄紙会社」(現東京都北区王子)です。

一方、ヨーロッパへの伝播は遅く、8世紀になってようやく西アジアへ伝わり、エジプトを経て地中海沿岸に拡大し、12世紀に入ってからと言われています。
当時のヨーロッパでもボロ切れが原料として使われていましたが、紙の需要が増えたことでボロ切れ自体が不足するという事態となり、試行錯誤の末の1840年にドイツで「パルプ」(木材等の樹皮を取り除き、細かくした繊維)を使った紙ができました。

紙の種類

電球が点灯しています

紙は大別すると「紙」「板紙」に分類されます。

新聞用紙、雑誌、ノート、コピー用紙、レシート、米袋、包装紙、封筒、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル、書道半紙、グラシン紙(お菓子を包む半透明の紙)、積層板原紙(電気機器の基板=濃緑色の場合が多い)等。

板紙(厚い紙)

段ボール、お菓子の箱、ラップの芯、賞状等を入れる筒、石膏ボードの外皮等があります。

紙・古紙の現状

ごみの山

日本国民が1年間に消費する紙の量      

  日本国民が1年間に消費する紙

経済産業省の統計によると、私達日本国民が1年間に消費する紙(板紙を含む)は、1977年が134.3㎏、1980年が152.6㎏、1990年が228.3㎏、2000年が250.1㎏でピークとなり、2005年が245.6㎏、2010年が217.2㎏、2015年が207.9㎏、2018年が198.6㎏と減少していますが、大体200㎏前後で落ち着くのではないかと見込まれています。

パソコンの普及と情報化の流れとともに増加して行った紙の消費でしたが、環境意識の高まり(例えば、環境ISOの取得等)により、節約・省資源化の結果として消費が下がってきたとの説があります。

紙・板紙の生産量

  紙・板紙の生産量

日本製紙連合会によると、2018年の紙・板紙の生産量は26,056,000t(紙消費が13,369,000t、板紙が11,737,000t)で、内訳として印刷・情報用40.4%、包装・加工用52.5%、衛生用7.2%となっており、繊維原料構成で針葉樹・広葉樹等から作られたパルプ35.6%、古紙64.3%、その他0.1%でした。

 紙・板紙の生産構成比

  紙・板紙の生産構成比

 紙・板紙原料構成比

  原料構成比

日本では、パルプより古紙の構成比の方が高いのが特徴です。これを支えているのが「古紙の回収」ということになります。

日本製紙連合会より

古紙の回収と消費

古紙

使用する紙の約2/3を占める古紙の回収は、1972年が37.9%、1980年が46.2%、1990年が49.7%、2000年が57.7%、2010年が78.2%、2018年が81.6%と年々回収率が上がってきています。

一方、その古紙の利用率は、1990年が51.5%、2000年が57.0%、2010年が62.5%、2015年が64.3%、2018年が64.3%とほぼ頭打ちの状態になっています。

つまり、日本国内では紙のリサイクルが進んだお陰で8割の古紙が回収されている一方で、古紙の利用率は6割強に留まるという結果になりました。この「使い切れない古紙」の行き先のメインが中国でしたが、皆さんご存知の通り、中国国内の環境問題による「廃棄物由来製品の輸入禁止」で、プレス(1tほどの立方体形状に押し固め、針金で締めたもの。「ベール」と言う。)された古紙をそのまま輸出できなくなったために国内に古紙が溢れる状況になっています。

これを解決する方法として、中国周辺の国(主に東南アジア諸国)に製紙工場を建設し、日本からの古紙を「製品」に加工してから中国へ販売する手法が取られてきていますが、まだまだ本格稼働に至っていない上、中国国内でも古紙の回収が行われるようになったため、完全な消費回復が望めるかどうかは予断を許さない状況は続いています。

100%古紙にできない理由

3R

古紙のリサイクル方法については後述しますが、「古紙が余っているなら、全部古紙で紙を作れば良いのでは?」と疑問をお持ちの方にご説明します。

紙は、細かい繊維(広葉樹パルプで長さ2mm、太さ20μm程度)が絡み合うことによって作られますが、この繊維が絡み合うにはある程度の長さと、繊維の表面が「ささくれ立っている」ことが重要なポイントです。

古紙はリサイクルを重ねていくことで、この繊維が短くなったり、ささくれができなくなる太さになったりしてしまいます。これでは紙にならないため、木材等のパルプを混ぜなければなりません。

よく、「古紙100%」という製品を見ますが、これは一度しか使用していない牛乳パック(衛生上、必ずヴァージン材で作る/一度でも使用すれば古紙と言われます。)からできる製品(トイレットペーパー、ペーパータオル等)で再生に問題ないレベルのものか、補強材(窒素系の薬品)を使用して強度を持たせたもので、前者は基本的にリサイクルできない紙ですので廃棄され、後者も度重なるリサイクルはできないので木材等のパルプを混ぜなければならないのです。

また、「木を切るのはけしからん。」とお怒りの方もいらっしゃると思いますが、現在の木材は自然に生えている木を勝手に切っているのではなく、計画的或いは製紙専用に植樹されたものや間伐材、加工の際に発生した端材を使っているため、自然破壊はせず、捨てられてしまうものを有効利用しているのです。さらに、樹木は成長する際に二酸化炭素を吸い酸素を出しますが、成長してしまうとほとんど酸素を出さなくなるので地球温暖化のためにも、健康な森林を保持していく上でも、木材パルプを使用することは必要なのです。

 

古紙のリサイクル

古紙のリサイクル

ご家庭やオフィスビル、スーパーマーケット等の店舗から回収された紙や段ボールは、市中の「古紙屋」と呼ばれる「プレス機」(ベーラー:圧縮梱包機)のある工場に運ばれます。この工場では、紙の種類別(新聞、雑誌、コピー用紙、段ボール、牛乳パック、雑紙等)に、概ね1tほどの立方体に押し固め(上記写真の通り)45本の針金で結束します。これをトラックに積み込んで「製紙工場」に運びます。

製紙工場では、次のような工程でリサイクルされていきます。

①古紙を溶かす

古紙は、温水と薬品(苛性ソーダ、脱墨剤)が入れられた「パルパー」(巨大な洗濯槽のような装置)に投入され、撹拌しながらドロドロに溶かし、インクを剥がしやすくしつつ大きなごみ(ガムテープ等)を除去します。

②ごみを濾す

ドロドロになった古紙は「スクリーン」(細かい網目の濾過装置)を通して、細かいごみを除去していきます。

③インクを取り除く

「フローテーター」と呼ばれる装置で、洗剤と微細な空気の泡を混ぜることにより、剥がれたインクや塗料が泡に付着し除去され、繊維だけが残ります。

④漂白

「漂白タワー」という装置に投入し、過酸化水素水(商品名「オキシドール」として有名。)を混ぜて繊維を漂白します。

⑤洗浄・脱水

漂白された繊維をきれいな水で洗ったあと、余分な水分を脱水すると「古紙パルプ」となります。

⑥抄紙機(しょうしき)

抄紙機とは、紙を抄(す)く機械のことで、「和紙作り」をテレビ等でご覧になったと思いますが、これを機械で行う原理です。

この抄紙機にはいくつかの種類がありますが、基本的には水と混ぜた古紙パルプを金網(ワイヤーと呼ばれます。)の上に載せていきます。金網の網目から水が落ち、金網の表面には古紙パルプが残り、これを乾燥させると「紙」の完成です。

新聞紙や印刷用紙等の薄い紙を高速で作る場合、「長網抄紙機」と呼ばれる抄紙機が使われます。これは、平面のベルトコンベア状に移動する金網の上に水と混ぜた古紙パルプを落として、金網を振動させることで紙の厚み等を均一化して抄く方法です。

一方、厚みの必要な紙を作る場合は、「円網(まるあみ)抄紙機」が使われます。水と混ぜた古紙パルプの入ったプールの中で横倒しにした円筒形の金網(上側が水面から出ている。)が回転し、紙を抄いていきます。水面から出た金網の上をフエルトのベルトコンベアが移動し、紙を貼り付けていきます。(転写のイメージ。)

この貼り付け作業の際、進行方向上に円網をいくつも並べることで紙の厚さを厚くすることができます。

リサイクルできない紙、禁忌品(きんきひん)

注意

リサイクルをするということは、すなわち何らかの「製品(商品)」にすることに他なりません。製品又は商品にするには「品質」が求められるのは最低条件と言えるでしょう。限りある資源を有効に活用し、省コスト、安価でリサイクルを続けて行くためにも正しい知識を覚えて頂きたいと思います。

①石、ガラス、土砂、木、布、プラスチック、ビニール等の紙以外のもの

②食品残渣、臭い、汚れのついた紙

宅配ピザやドーナツ、ケーキ、ハンバーガー等が入れられていたもの、石鹸やお線香等の包装紙。

③撥水・防水加工された紙

ろう(蝋)、ビニール、銀紙、アルミ箔が塗布或いは張り付けられている段ボールや紙類、金・銀の折り紙、ラミネート加工された紙、紙コップ、紙皿、カップ麺の容器。

④シール、粘着テープ

シールとその台紙、紙・布・セロハンテープ、圧着ハガキ(接着してあるのを剥がして中を見るタイプのハガキ。公共料金の請求書、銀行の案内等に使われます。)。

⑤レシート、カーボン紙、印画紙

レシートに使われる感熱紙、宅配便の伝票等に使われるカーボン紙、ノーカーボン紙、写真に使われる印画紙、アイロンプリント紙。

⑥壁紙、窓付き封筒

壁紙、ビニールの窓が付いた封筒、内側にエアクッション(プチプチ)が貼られている封筒(通販用に多い)、地図、選挙用ポスター。

⑦クッキングシート、緩衝材

クッキングシート、カバンや靴に入っている薄い緩衝材の紙、果物類のクッション材に使われている緑色やピンク色のもの。

⑧不織布、衛生用品

マスク、お手拭き(ペーパータオル)、紙オムツ、生理用品、ペット用トイレシート、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、トイレットペーパー。

⑨バインダー、アルバム

バインダー(金属、プラスチックの留め具や鋲が付いているもの)、コイル状の綴じ金具・プラスチックが使われているノートや書籍、台紙に糊やビニールが使われてアルバムや名刺ファイル等、布やタイル等の紙以外のサンプルが貼り付けられているカタログ。

古紙を出す時のルール

ルール

お住まいの自治体や回収業者によって多少の違いはありますが、最低限次の分別をしましょう。出す際は、きちんと折りたたみ紐で縛るか、紙袋に入れましょう。

新聞紙

チラシは取り除いて下さい。(一緒でいい場合もあります。)

雑誌

週刊誌や本。付録の類は取り除いて下さい。 コピー用紙(※1)

段ボール(厚紙を含む)

段ボール、お菓子の箱紙(※2)等。

雑紙(ざつがみ)

封筒、チラシ、ハガキ等。

牛乳パック

アルミ箔が貼られているものは可燃ごみ。プラスチックの注ぎ口は取り除く。きちんと洗って、切り開き、よく乾かす。

(※1)コピー用紙の区分については、雑誌か雑紙のいずれか、又はコピー用紙単独の場合があります。
(※2)お菓子の箱紙等の区分のついては、雑紙とされる場合があります。

当社の古紙リサイクルフロー

段ボールリサイクルフロー

古紙排出のルールポスター

段ボールの出し方

弊社では、段ボール古紙の回収の際に良質リサイクルを行うために上記のようにご協力のほどよろしくお願いします。

排出方法

紙とは異なる異物ビニールなど)は分別ください。
段ボールはしっかりと畳みましょう
カーゴ台車に乗せる場合は、荷崩れしないようにきれいに積みましょう
スペース確保の為カーゴ台車は無駄なく使用しましょう

間違いやすいもの

アルミ蒸着の段ボール
ビニールコーティングされたもの
海外製の段ボールによくみられる「ロウ」ワックスが付着したもの
トイレットペーパーの芯・卵パック・果物トレーなど
油が酷く付着したもの

※段ボールについているテープ、ガムテープなどはそのままで結構です。

 

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廃棄物収集運搬は利根川産業

利根川 靖

監修

利根川 靖

株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。

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